事業戦略C発注者向け入門

「参考サイト」の正しい伝え方 — 何が好きかを言語化する

参考サイトを正しく伝える方法と、デザイナーへの効果的な依頼方法を実務視点で解説

「このサイトみたいに」で生まれる混乱

このセクションでは、曖昧な参考サイトの伝え方がプロジェクトにもたらす具体的なトラブル事例を示す。

「このサイトのような感じでお願いします」。Web制作の現場で最も頻繁に聞かれる発注者の言葉だ。しかし、この一言から始まるプロジェクトの多くが、予想外の方向に進んでいく。

ある中小企業の事例を見てみよう。同社のマーケティング担当者は、競合他社のコーポレートサイトを参考として提示し、「こんな雰囲気で」とデザイナーに依頼した。3週間後に上がってきた初回デザイン案を見て、担当者は困惑した。確かに参考サイトの要素は入っているが、「何かが違う」。色使いも、レイアウトも、なんとなく参考サイトに似ているのに、期待していたイメージとは大きく異なっていた。

修正指示を出すものの、「もう少し高級感を」「もっとスタイリッシュに」といった抽象的な表現しか出てこない。結果として、修正は3回を超え、当初予定していた納期は1か月遅れ、追加費用も発生した。デザイナー側も「参考サイトに寄せたつもりだったのに」と困惑している。

このような状況は決して珍しくない。参考サイトの伝え方一つで、プロジェクト全体の品質とコストが大きく左右される。「参考サイト 伝え方」で検索する発注者が多いのも、この問題の深刻さを物語っている。

問題はより深刻だ。曖昧な指示により生まれる認識のズレは、単に修正回数が増えるだけでは済まない。デザイナーとの信頼関係に影響し、今後の協業にも支障をきたす可能性がある。また、社内での承認プロセスも混乱し、決裁者から「なぜこのデザインになったのか」という説明を求められたときに、明確な回答ができなくなる。

なぜ参考サイトの伝え方で失敗するのか

このセクションでは、参考サイトをめぐるコミュニケーション問題が発生する構造的な原因を分析する。

参考サイトの伝え方で失敗する根本的な原因は、発注者とデザイナーの「見る視点の違い」にある。発注者は参考サイトを見るとき、直感的に「良い・悪い」「好き・嫌い」で判断する。一方、デザイナーは職業柄、参考サイトを構成要素に分解して理解しようとする。この視点の違いが、最初の認識ギャップを生む。

具体的には、発注者が「このサイトが良い」と感じる理由は多岐にわたる。色彩、フォント、レイアウト、写真の雰囲気、コンテンツの見せ方、ナビゲーションの使いやすさなど、複数の要素が組み合わさって「良い」という印象を形成している。しかし、これらの要素を言語化せずに「このサイトみたいに」と伝えると、デザイナーは推測で作業を進めることになる。

さらに、発注者自身が「何が好きなのか」を明確に把握していないケースが多い。デザインに関する専門知識がないため、感覚的な好みを論理的に説明することが困難だ。「デザイン 参考 指示」の適切な方法を知らないまま、感情的な表現に頼ってしまう。

業界構造も問題を複雑化させている。多くのデザイナーは、発注者の意図を汲み取ろうと努力するものの、限られた情報から推測するしかない。質問をしても、発注者から具体的な答えが返ってこないことも多い。結果として、デザイナーは自分の判断で作業を進め、発注者の期待とは異なる成果物が生まれる。

時間的制約も影響している。プロジェクトの初期段階で十分なヒアリングを行わず、とりあえず参考サイトを示して作業を開始するケースが多い。この「見切り発車」が後々の認識ズレを拡大させる要因となる。

発注者側の社内体制も問題だ。実際にデザイナーとやりとりする担当者と、最終的な決裁権を持つ責任者の好みが異なる場合がある。担当者が良いと思った参考サイトが、決裁者には響かないケースも珍しくない。この内部の認識統一不足が、プロジェクト後半での大幅な方向転換を招く。

参考サイトを正しく伝える5つのステップ

このセクションでは、発注者が参考サイトを効果的に伝えるための具体的な手順を示す。

効果的な参考サイトの伝え方は、以下の5つのステップで実現できる。

ステップ1:参考サイトの分析と要素の分解

参考サイトを示す前に、自分がそのサイトの「何」を気に入ったのかを明確にする。色彩、レイアウト、フォント、写真の雰囲気、コンテンツの構成など、具体的な要素に分けて考える。

例えば、あるECサイトを参考とする場合、「商品写真の見せ方が魅力的」「ナビゲーションがシンプルで分かりやすい」「全体的に清潔感がある白を基調とした配色」といった具合に要素を特定する。

ステップ2:優先順位の設定

分解した要素の中で、特に重要視したいポイントに優先順位をつける。すべての要素を同じ重要度で伝えると、デザイナーも焦点を絞りにくい。

「最も重要なのは商品写真の見せ方、次にナビゲーションの使いやすさ、配色は参考程度」といった明確な優先度を設定する。この優先順位は、予算や制作期間の制約とも関連付けて考える必要がある。

ステップ3:具体的な言語化

感覚的な表現ではなく、可能な限り具体的な言葉で説明する。「おしゃれ」「かっこいい」といった主観的な表現は避け、「余白を多く使ったミニマルなレイアウト」「彩度を抑えた落ち着いた色調」など、客観的に理解できる表現を使う。

色については、カラーコードを調べて具体的に指定する。フォントについても、「ゴシック体」「明朝体」といった大まかな分類だけでなく、可能であればフォント名まで特定する。

ステップ4:複数の参考サイトの提示

単一の参考サイトではなく、3-4つの異なるサイトを示し、それぞれから取り入れたい要素を明確にする。これにより、デザイナーは発注者の好みの傾向をより正確に把握できる。

「サイトAの商品写真の配置、サイトBのナビゲーション、サイトCの配色」といった具合に、要素別に参考を示す方法も効果的だ。

ステップ5:NGパターンの明示

好みの参考サイトと同時に、避けたいデザインパターンも伝える。「この色は使わないでほしい」「このようなレイアウトは避けたい」といった制約を明確にすることで、デザイナーの作業範囲を適切に絞り込める。

これらのステップを踏むことで、「デザイナー 依頼 参考」として質の高いコミュニケーションが実現する。重要なのは、デザイナーが推測ではなく、明確な指針に基づいて作業できる環境を提供することだ。

発注者が陥りやすい参考サイト指示の落とし穴

このセクションでは、実際の現場でよく見られる間違った参考サイトの伝え方とその対処法を具体的に示す。

落とし穴1:「この通りに作って」という完コピ指示

最も危険なのは、参考サイトをそのまま模倣するよう指示することだ。デザインには著作権があり、完全なコピーは法的問題を引き起こす可能性がある。また、参考サイトのデザインが、発注者の事業内容や目的に必ずしも適しているわけではない。

対処法として、参考サイトは「方向性を示すもの」と位置づけ、自社の事業特性に合わせてカスタマイズする前提で伝える。「このサイトの〇〇の要素を参考に、弊社らしさを加えて」という伝え方が適切だ。

落とし穴2:相反する複数の参考サイトの提示

全く異なるテイストの参考サイトを同時に提示するケースがある。例えば、ミニマルなデザインのサイトと、装飾的で華やかなサイトを同時に「どちらも良い」として示す場合だ。これではデザイナーは方向性を決められない。

対処法として、参考サイト間の整合性を事前に確認し、統一感のあるテイストのサイトを選ぶ。どうしても異なるテイストのサイトを参考にしたい場合は、それぞれから取り入れたい具体的な要素を明確に分けて伝える。

落とし穴3:業界や用途の違いを無視した参考サイト選択

自社とは全く異なる業界のサイトを参考として示すケースがある。BtoB企業がファッションECサイトを参考にする、医療機関がゲーム会社のサイトを参考にするなど、ターゲット層や業界特性を無視した参考選択は混乱を招く。

対処法として、まずは同業界や類似業界のサイトから参考を探す。他業界のサイトを参考にする場合は、なぜそのサイトを選んだのか、具体的な理由を説明し、どの要素を取り入れたいかを明確にする。

落とし穴4:技術的制約を考慮しない参考サイト選択

高予算で制作された大企業のサイトや、特殊な技術を使った実験的なサイトを参考として示すケースがある。発注者の予算や技術的制約を考慮せずに、理想的すぎる参考サイトを選ぶと、実現可能性の問題が発生する。

対処法として、予算や制作期間をデザイナーと事前に共有し、その範囲内で実現可能な参考サイトを選ぶ。高度な機能や特殊な演出を含む参考サイトの場合は、優先度を明確にし、予算に応じて取捨選択する準備をしておく。

落とし穴5:継続的な方向転換と新たな参考サイトの追加

プロジェクト進行中に、新しい参考サイトを次々と追加するケースがある。「やっぱりこっちのサイトも良い」「こんな感じも取り入れたい」といった継続的な変更は、プロジェクトの方向性を混乱させ、コストと期間の増大を招く。

対処法として、プロジェクト開始前に参考サイトを確定し、変更が必要な場合は明確な理由とともに、追加コストと期間への影響を確認してから実施する。感情的な好みの変化ではなく、事業上の合理的な理由に基づく変更に限定する。

プロジェクト成功のための参考サイト活用法

このセクションでは、継続的なプロジェクト成功を実現するための、参考サイト活用の体系的アプローチを示す。

効果的な参考サイト活用は、単発のプロジェクトを成功させるだけでなく、組織のデザインコミュニケーション能力を向上させる。以下の取り組みを通じて、継続的な改善を図る。

社内での参考サイト収集体制の構築

日常的に優れたサイトを収集し、分析する習慣を作る。マーケティング担当者だけでなく、営業、企画、経営陣など複数の視点から参考サイトを評価し、社内でのデザイン好みの傾向を把握する。

月1回程度の頻度で「参考サイト共有会」を実施し、各部署が見つけた優れたサイトを共有する。その際、単にサイトを紹介するだけでなく、「なぜ良いと思ったか」「自社に取り入れるとしたらどの要素か」まで議論する。

参考サイト分析シートの作成

参考サイトを体系的に分析するためのフォーマットを作成する。色彩、レイアウト、フォント、ナビゲーション、コンテンツ構成、写真の雰囲気など、評価項目を統一し、客観的な分析を可能にする。

このシートを使って分析した参考サイトは、データベース化して蓄積する。将来の制作案件で活用できる参考サイトライブラリを構築することで、毎回ゼロから参考サイトを探す手間を省ける。

デザイナーとの継続的な関係構築

単発の案件ごとにデザイナーを変えるのではなく、可能な限り継続的な関係を築く。継続的に協業することで、デザイナーは発注者の好みや事業特性を深く理解し、より精度の高い提案ができるようになる。

定期的にデザイナーとの振り返り会を実施し、過去のプロジェクトでの参考サイトの活用方法や、コミュニケーションの改善点を話し合う。デザイナーからのフィードバックを積極的に取り入れ、参考サイトの伝え方を継続的に改善する。

成功事例の社内共有と標準化

参考サイトを効果的に活用できたプロジェクトの事例を社内で共有し、成功パターンを標準化する。どのような伝え方が効果的だったか、どの程度の詳細な指示が適切だったかなど、具体的なノウハウを蓄積する。

また、失敗事例も同様に共有し、避けるべきパターンを明確にする。成功・失敗の両方の経験から学ぶことで、組織全体のデザインコミュニケーション能力を向上させる。

参考サイトを超えた独自性の追求

参考サイトは出発点であり、最終的な目標ではない。参考サイトから学んだ要素を自社の事業特性や目標に合わせてカスタマイズし、独自性のあるデザインを追求する。

競合他社との差別化を図るため、参考サイトとして同業界のサイトばかりを選ぶのではなく、異業界の優れた要素も積極的に取り入れる。ただし、その場合は自社の業界や顧客に適応させるための工夫を忘れない。

これらの取り組みを通じて、参考サイトの伝え方は単なるテクニックから、事業成長を支える重要なコミュニケーション能力へと発展する。継続的な改善により、デザイナーとの協業品質を向上させ、より効果的なWebサイトの実現を目指そう。

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